第83棟目:プラウドタワー芝浦

出典元:公式HP

本日の物件

本日の食材となる物件は「プラウドタワー芝浦」です。4月にオンライン説明会が開催され、このGW期間中からマンションギャラリーがオープンした注目のマンションです。

竹中工務店・長期優良住宅・港区ブランドと行政サービスが享受できるのに価格は控えめな芝浦エリアなどなど魅力いっぱいのキーワードが関心を掻き立てるのでしょうか、当ブログにも「駅距離に我慢できるなら買いではないか」との臨戦態勢のメッセージが続々と届いています。

しかし、当物件は東池袋でイメージ図とは似ても似つかないアパートのようなタワーマンションを乱発している野村不動産がデベロッパーです。登板すると50%以上の確率で試合をぶち壊す現レッドソックスの澤村をマウンドに送り出すときくらい注意深くならなくてはなりません。

幸運にもオンライン説明会に参加することができましたので、現時点での情報でレビューを書いてみます。マンションギャラリーに訪問する前の予習としてお読みいただければ幸いです。

>> 当ブログを初めて訪問された方はこちらをお読みください。

>> レビューで使う評価軸はこちらをご覧ください

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モデルルーム

評価

チェック1:東京・品川・新宿まで30分程度→合格

※ 当項目はどれだけ便利な駅なのかという最寄駅の駅力を判定します。

最寄り駅となるJR田町駅からは東京駅まで9分、品川駅まで3分、新宿駅まで23分です。多くの人にとって魅力を感じる交通利便性となります。もちろん合格です。

チェック2:食べログの店舗数400件以上→合格

※ 当項目は飲食店の数で駅力を測定し、売却時の客付きを判定します。

田町駅で検索したところ911件の結果になりました。マンション建設地周辺の芝浦は殺風景で飲食店もまばらですが、山手線内側となる三田駅周辺の飲食店が含まれるためこの結果になります。

田町駅の駅力は問題ないと判断して合格としますが、芝浦に住む同僚からは「芝浦はお店も全然なくて、素敵な街とは程遠いよ」と素直な意見をもらっているように合格という結果に何か釈然としないものが残ります。

豊洲vs芝浦

豊洲に住む同僚の発言も興味深いものがありました。同僚曰く「楽しむなら豊洲、住むなら芝浦」とのこと。豊洲と芝浦は隣接しているため比較対象にされる傾向にありますが、この豊洲に住む同僚の一言は豊洲と芝浦のキャラクターの違いを見事に表現しています。

総武線沿線で例えれば小岩と新小岩を比較して優劣を決めようとしているのと同じです。どちらが優れているという話ではなく、どちらが好きかという趣味嗜好の話です。

チェック3:駅から徒歩5分以内→落第

※ 当項目は資産価値の土台となる駅距離を判定します。

最寄り駅の田町駅まで徒歩11分なので落第です。なお、GoogleMapで検索すると徒歩13分であり、当物件から駅までの道中にはいくつもの信号が存在するため徒歩13分の方が実態に近いです。

当物件は目の前に交差点があるため用事のたびに交差点を横断することになるのは地味にマイナス点です。現地調査の際は当物件前の信号で足止めをされた以外はスムーズに信号を通過できたこともあり改札出口から当物件の建設地まで11分30秒で到着しましたがこのスピードで常時行き来できるとは考えない方がよいでしょう。

駅距離は重要

最近はテレワークだから駅距離は関係ないという人もいますが、そういう自分勝手な人ほど資産価値を気にしているのは滑稽です。多くの人に選ばれるマンションだから資産価値が保たれるのです。駅距離を気にする人に選ばれることを自ら放棄するのはもったいない限りです。

チェック4:安定した地盤であること→落第

※ 当項目は地盤の強度を測定し、自宅が非常時の避難場所になり得るか判定します。

当物件の建設地は埋立地ですから落第にしかなりません。コメント欄にて当物件の住所である芝浦4丁目は港区の内陸に負けない地盤の固さがあるとのご連絡をいただきましたのでその辺りは各自がマンションギャラリーでご確認ください。芝浦4丁目という狭い視点ではなく芝浦エリア全体で判断してください。

また、地盤が弱いエリアは万が一の時よりも、地盤にこだわる人に見向きもされないことの方が問題なのです。駅からの距離と同じで資産価値を気にするのであれば地盤を無視してはいけません。

チェック5:残債割れにならないこと→合格(補欠)

※ 当項目は残債割れのリスクを判定します。

候補の部屋

レビュー対象の間取りは79NA-W(北西角部屋・高層階・3LDK・79m2・12,800万円)です。

アイランドキッチンを採用せざるを得なかった影響でLDKの居住スペースが14.6畳の約半分程度しかない歪んだ間取りですが、北と西がほぼ全て窓で埋め尽くされているのは圧巻です。売却する際の内見者が感動するのは確実です。

また、3つある洋室にも窓があり、ウオークインクローゼットが2つあるのも売りになるでしょう。中古検討者が内見時に見るポイントは「眺望・日照・収納」だけですが、レビュー対象の間取りは全てを満たしている間取りです。

なお、野村不動産お得意の下り天井祭りについては後述します。間取り図に下がり天井が記載されていない時点で察することができますが、お楽しみは最後に取っておくことにします。

出典元:公式HP

部屋選びが難しい

眺望と日照が阻害されると資産価値に影響します。ゆえにマンション購入の際は方角と階数の選択は慎重になる必要があります。そして、当物件は将来的に同規模のタワーマンションに囲まれるというリスクを抱えた物件です。

レビュー対象として選んだ間取りは低層階から高層階までの価格差がほぼない価格設定になっています。マンションの部屋ごとの価格はあらゆる条件を加味して冷徹に設定されます。低層と高層で価格差がないということは、北西方面は眺望と日照が将来も現状が続く可能性が高いとデベロッパーが考えていることの証拠です。

レインボーブリッジが見える東向きの高層階を購入したら、10年後に同規模のタワーマンションで眺望が遮られるようなことにでもなれば、どれだけ泣いても泣き足りないでしょう。眺望をあきらめて公開空地に面する西側の低層階を選ぶという消極的な選択は当物件においては堅実な選択になります。

ただ、西側は大通りに面していて騒音に悩まされることになります。現地調査をした日は休日の午前中でしたがそれでもかなりの交通量であり立派な騒音が発生していました。この騒音を聞いてしまうと価格が高くても騒音が和らぐ東側が良いのではないかとも感じます。

当物件はとにかく部屋選びが難しい物件です。検討される方はマンションギャラリーや現地で眺望・日照・騒音を徹底的に確認してください。

試算結果

入居時 :購入12,800万円、売却12,800万円(坪単価535万円)、収支±0万円
5年後:残債11,183万円、売却11,603万円(坪単価485万円)、収支+420万円
10年後:残債. 9,500万円、売却10,025万円(坪単価419万円)、収支+525万円

周辺相場はグローバルフロントタワー(駅徒歩10分/17階/北/築6年/70m2)が10,280万円(坪単価485万円)、芝浦アイランドケープタワー(駅徒歩13分/26階/南/築15年/75m2)が8,920万円(坪単価393万円)でSUUMOに出ています。

また、当物件と隣接している東京ベイシティタワー(駅徒歩13分/22階/北西角/築7年/55m2)は6,980万円(坪単価419万円)でSUUMOに出ています。直近で価格改訂(値下げ)がなされているのは芝浦エリアの限界が近いことが伺えます。

売り出し価格が適正価格から5〜10%ほど上乗せされている傾向、角部屋である希少性など諸条件を補正すると10年後に坪単価419万円程度になるとみておけば大外れはしないでしょう。

そして、下落率はマンション全体の平均下落率である年間2.00%を上回る年間2.17%になりました。残債割れが回避できるかどうかギリギリという微妙な資産性のため判断に迷います。物件価格に対して収支のプラス額がほぼ誤差でしかない金額だからです。

それでも往復にかかる諸経費程度は回収できますので当項目は補欠合格とします。1億2,800万円のマンションを売買して手元に残る金額がほぼゼロとは何とも夢のない話です。

相場の上昇が止まらない

それにしてもブランズタワー芝浦のレビューからたった1年で5%ほど相場が上昇していることに驚きます。世界中で住宅価格が上昇しているので仕方がないと諦めるしかありません。蛇口から溢れ出てくる水はどこかに移さなければならないのです。

一方でその影響で1年前なら赤字になるはずだった当物件の収支が黒字になったことも事実です。相場全体のトレンドが個別物件に及ぼす影響度合いの大きさに戦慄するばかりです。

持つ者と持たざる者の格差が広がるばかりのこの状況が健全なのかは分かりませんが、トレンドに乗る以外にやれることはないのです。このトレンドを多くの人は察知しているのでしょう。風の便りで閑古鳥が鳴いていたブランズタワー芝浦が売れ始めたとのこと。まさに神風です。

パークコート神宮北参道ザタワーやパークコート千代田四番町の坪単価を見せつけられたら、腐っても港区という言葉を呟きながら芝浦を選ぶのは理解できます。

>> 神風が吹いて息を吹き返したマンションはこちら

>> 中古マンションにも目を向けて欲しいです。

チェック6:家賃よりも安いこと→落第

※ 当項目は賃貸との優劣を判定します。

グローバルフロントタワー(田町駅徒歩10分/東/22階/築6年/76m2)が月額36.0万円でSUUMOに掲載されています。

購入の方がわずかにお得ではありますが、たった0.8万円の差でしかありませんので落第にします。この程度の価格差であればバブル崩壊に備えたヘッジとして賃貸を選ぶ方が無難です。特に当物件は1億円を超える価格帯であり購入と売却時の往復手数料はもっとかかる可能性があります。

特に500円/m2に迫る凶悪な管理費は許容できるものではありません。ブランズタワー芝浦は412円/m2、白金ザスカイは386円/m2ですから当物件の管理費がいかに異常値であるかが分かります。

おそらくあまりの不評に少し値下げされるはずです。値下げありきの価格を提示しているだけですのでそれほど神経質にならなくてもいいとは思いますが、ブランズタワー芝浦より管理費が高くなるのは確実であり十二分に割高な管理費であることに変わりはありません。

購入の場合

支払額    35.0 万円(金利0.8%)
管理費修繕費   5.2 万円(仮)
固定資産税    1.0 万円(仮)
諸経費       5.0 万円(往復)
専有部修繕費  1.0 万円
ローン控除     ▲4.1 万円(長期優良住宅です)
10年後の価値 ▲4.3 万円(お金が戻ってきます)
=====================================
合           計   38.8 万円(10年平均)

賃貸の場合

家賃    36.0 万円(管理共益費込み)
諸経費       3.6 万円(敷礼金・更新料・保険料等)
=====================================
合        計   39.6 万円(10年平均)

長期優良住宅は立地の弱さを補うため

なお、当物件は長期優良住宅であり住宅ローン控除の制度が維持されると仮定すれば住宅ローン控除額が通常よりも上乗せされます。通常の控除額との差は月々0.8万円であり、もし当物件が長期優良住宅でなかったとしたら当項目は明確な落第となります。

長期優良住宅だから当物件はお買い得などと思っている人がいるならフリスクを目一杯口に詰め込んで、ウィルキンソンの炭酸を口いっぱいに入れて、X JAPANの紅を爆音で聴きながら全力でヘッドバンキングして冷静になってください。

長期優良住宅の取得はデベロッパーにとって単なるコスト増でしかありません。取得しない方が利益が増えるのです。なぜ野村不動産が自分たちの利益を削ってでも長期優良住宅を取得したのかを考えなくてはいけません。

当物件の立地に価値がないから長期優良住宅という付加価値をつけたというのが私の推論です。月島駅徒歩12分という中央区の最果てに建設されたパークタワー晴海も長期優良住宅だったことがその論拠です。

また、居住者が長期優良住宅で得する分を管理費で回収しようとしている節があります。長期優良住宅で増えた控除額を野村不動産の利益として還元させる構造であれば、500円/m2に迫る管理費の謎が解けます。

これぞ不動産屋という野村不動産の銭ゲバ体質は清々しい限りです。近い将来においてマンション管理業務のコスト増は避けられないから購入時から値上げしておくという現実的な対応だという冷静な指摘は面白くないので無視することにします。

また、この程度の管理費は妥当とのご指摘もありますが妥当だからといって許容できるわけではないはずです。白米より玄米の方が栄養価が高いのは周知の事実ですが、白米の方が選ばれるのはなぜかという話です。

妥当な管理費でも売却時のネックとなるのなら弱点でしかありません。妥当であることの正当性を主張するのは無意味なのです。

>> マンションを購入しないという選択もあります。

購入と賃貸

>> 金利は固定金利の方が安心です。

>> 手付金は満額払ってはいけません。

チェック7:目立つこと→落第

※ 当項目は売却時に指名買いが発生するかを判定します。

当物件が建設されるエリアはこれからも同程度のタワーマンションが建設可能なエリアです。今は最新のタワーマンションという優位な立場にありますが、次のタワーマンションが発表されればあっという間に十把一絡げの存在に埋没することになります。

同じエリアにある築6〜15年程度の中古マンションではなく新築の当物件を検討している人が多いことがその証左です。東京ベイシティタワーが価格改訂(値下げ)している事実から目をそらしてはいけません。築7年で見向きもされなくなるのですからほぼ同じ立地である当物件の賞味期限は長くても築10年、旬は築5年までと考えておく必要があります。

当項目は末長くエリアのシンボルとなり競合に対する優位性を維持できるかを判定する項目です。築10年が賞味期限のマンションに合格を出すことはできませんので落第とします。

外観は一級品の可能性あり

前述のように野村不動産は東池袋のタワーマンションでイメージ図があくまでイメージでしかないことを自ら証明するお茶目なデベロッパーです。当物件もその二の舞になるのではないかという不安が読者から寄せられるのも仕方がないところです。

一方で当物件は施工会社にスーパーゼネコンである竹中工務店を採用しています。野村不動産×竹中工務店による直近の先行事例であるプラウド神田駿河台の完成後の姿を見れば東池袋のような惨状にはならないはずです。

ただし、外観はいいけど専有部はがっかり品質というプラウド神田駿河台の特徴も当物件は引き継ぐことになる懸念が残ります。これ見よがしにカップボードが標準装備から外されているのはまさにその一端です。モデルルームで入念な確認が必要です。

>> イメージ図が本当にイメージでしかないことを証明したマンションたち

チェック8:柱が室内に食い込んでいないこと→落第

※ 当項目は建物の設計の贅沢さとデベロッパーのヤル気を判定します。

公式HPの間取り図を見る限りでは合格ですが、下り天井も記載されている図面集を見れば震え上がることになります。間取りによっては天井の大半が下がり天井という凶悪なものすらあります。上階からの騒音対策に熱心な野村不動産です。

セブンイレブンの上底弁当が話題になりましたが、当物件の下り天井も似たようなものです。レビュー対象の間取である79NA-Wは多少マシですが許容するには聖人レベルの許容が必要です。よって当項目は落第です。

前回のレビューでも書きましたが、間取りを軽視する残念な傾向は数年前からすでに顕在化しているので仕方ないと諦めるしかありません。ましてや野村不動産は昔から間取りを軽視する三流デベロッパーですから尚更です。

むしろ当物件の間取りに限って見れば野村不動産にしては頑張っていると褒めるべきです。コンビニに行くたびに万引きをしていたヤンキーがたまたま万引きをしなかったら褒められるようなものです。悪いことをしてから良いことをすると褒められるのは大人の世界でも一緒です。

チェック9:洗面所の入り口が廊下にあること→落第

※ 当項目は建物の設計の贅沢さとデベロッパーのヤル気を判定します。

72m2の間取りでも洗面所の入り口がリビングに設置されているあたりは間取りを軽視している野村不動産の面目躍如です。間取りの設計を単なるパズルだと考えていることは間違いありません。居住者の使い勝手を無視しているということです。

また、アイランドキッチンの採用で居住スペースがほとんどなくなるという茶目っ気も野村不動産ならではの芸当です。この野村品質の間取りを見ると間取りの設計まで竹中工務店に依頼すると予算オーバーになるので、専有部(部屋)の設計は野村が手がけたという陰謀論を信じてしまいそうになります。

施工会社に竹中工務店を起用した目的がマンションの外観に箔をつけることだったとしたら野村不動産らしさもここに極まったと言えます。

前回レビューしたパークホームズ日本橋時の鐘通りでは当項目でデベロッパーである三井不動産の意地が見られましたが、当物件では野村不動産の残念な体質を際立たせることになりました。もちろん当項目は落第にしかなりません。

>> 間取りについてはこちらをご覧ください。

チェック10:家族の思い→合格

※ 当項目は評価者の個人的価値観を満たすかを判定します。

当物件のすぐ近くに「ゆで太郎 芝浦4丁目店」があるので合格です。

1年間で200日以上、松戸在住時代から10年以上もゆで太郎に通っている私にとって「ゆで太郎」が近くにあることは駅直結よりも価値があるからです。夜メニューから納豆温玉セットが消えた時は人目もはばからずに号泣しました。

現地調査の際には「ゆで太郎 芝浦4丁目店」の味をチェックしてきました。「ゆで太郎」はフランチャイズ店が多いせいか店舗によって微妙に蕎麦の味が異なるので味がイマイチだと当項目が落第になってしまうからです。

嬉しいことに「ゆで太郎 芝浦4丁目店」は美味しい蕎麦でした。安心して当物件を購入することができます

結果

結果は40点となりました。「ゆで太郎」というバリーボンズ級の圧倒的な魅力があるにも関わらずライバル物件であるブランズタワー芝浦(40点)と同じ結果です。後発物件が先発物件に勝てないのは情けないとしか言いようがありません。

特に購入しても賃貸より安くならない点は致命的です。これでは購入する意味がないからです。芝浦は賃貸で住むエリアであることがよくわかる結果とも言えます。

総評

新築マンションは初心者向けという嘘

「新築マンションの方が時間に余裕があってゆっくりと部屋が選べるから安心♪」という主張を聞くことがあります。しかし、時代遅れの老人の昔話なので信じてはいけません。

彼らは過去に新築マンションを買っただけで、いま新築マンションを買ってはいないのです。損をする方が難しい時代の武勇伝など聞くだけ無駄です。引退したOBの時代遅れの意見など聞く必要はないということです。

2021年の新築マンションは高倍率の抽選になってしまうのが現実です。これは検討時間が確保されているという新築マンションのメリットがデメリットにもなっているからです。確保された検討時間の間にライバルが続々と参入してしまうのです。

一定の検討時間があることが自分だけのメリットだと思っているのが時代遅れのOBたちです。自分にとってのメリットは自分以外の人にとってもメリットであるという当たり前のことを忘れてはいけません。

さらに需要が供給を上回る状況が拍車をかけます。マンションギャラリーの予約すら取れなかったという読者からの報告が絶え間なく届くこの状況は間違いなく不動産バブルです。バブルは需要が供給を上回ることで発生するのです。

新築マンション購入は鉄火場

新築マンションの抽選に5回連続で落選している私が断言します。現実は「気に入った新築マンションの部屋を買うのはほぼ不可能」という大変厳しいものです。

マンション購入は魁!!男塾というギャグ漫画に登場する中国拳法極限の孤児養成法である“孤戮闘“(こりくとう)のような存在になってしまったのです。

飢餓状態の子供たちに人数に対する半分の食料だけを奪い合わせ、何度もそれを繰り返すことでたった一人だけ見込みのある子供を選別するこの手法はまさに新築マンションの現状そのものです。

参加者が脱落せず次の戦いに参戦するので、新築マンションの現状の方が過酷です。私が5回も抽選に落ちるのは日頃の行いが悪いからではなく、この新築マンションを取り巻く厳しい現実のせいなのです。

新築マンションが買えるかどうかは最終的に運次第です。もちろん不人気な物件や割高な物件なら一本釣りで買うことはできますが、資産価値の面で見劣りするのは当然です。そんな部屋など誰も見向きもしないからです。

とにかく焦らないこと

もしあなたがこの厳しい現実を直視できていないのだとしたら、まずはこの厳しい現実を直視してください。ただし、厳しい現実を目の前にして焦ってはいけません。焦った初心者ほど失敗するからです。

当ブログには焦って失敗した住宅探し初心者からの報告がひっきりなしに届いています。だからどうしても伝えたいのです。これから住宅を探す方のとるべきスタンスは「厳しい現実を直視しつつも、焦らないこと」です。

手始めに東京ベイシティタワーから

焦らないためには地道な現地調査をする以外に方法ありません。まずは手始めに東京ベイシティタワーを徹底的に調べ上げましょう。売りに出ている部屋も賃貸に出ている部屋もあるので内覧をしてみるのです。ほぼ同じ立地ですから感じ取れるものが必ずあるはずです。

また、東京ベイシティタワーは当物件の半分程度の規模ではありますがランドスケープや建物は当物件に類似しています。当物件の実物をイメージするには格好の存在です。

周辺マンションも調査する

次に当物件周辺の別のマンションも内覧してみましょう。当物件の日照と眺望のイメージを掴むこと、築年数が経過したイメージを掴むことが重要です。条件と価格の適正なバランスもイメージが掴めてくるはずです。

周辺に似たようなマンションが多数あることは幸いです。それらのマンションは当物件の未来の姿だからです。当物件が中古になっても選ばれる存在なのかしっかり見極めることができます。

敵の敵は味方

周辺の中古物件の調査と並行して、ブランズタワー芝浦のマンションギャラリーに訪問することも忘れないでください。直接の競合物件ですから当物件の弱点を惜しみなく教えてくれます。この情報は当物件のマンションギャラリーでは教えてくれない貴重な情報でもあります。

さらに、白金ザスカイのマンションギャラリーにも訪問することをお勧めします。白金ザスカイは複数デベロッパーが担当しているJV方式なので野村不動産以外の営業マンに相談したい旨を事前に伝えておくことを忘れないようにしてください。

白金ザスカイの方が当物件よりも格上なので、上から目線で容赦なく当物件の弱点を教えてくれます。芝浦という埋立地に建設される駅から離れたマンションに対する冷徹な評価が見えてくることでしょう。特に当物件の価格設定については一聴する価値があります。

上記のプロセスを経れば当物件を丸裸にしたも同然です。当物件のマンションギャラリーに訪問しても、磨き上げた審美眼の前では当物件の自画自賛でしかないアピールは無力化し当物件の真の姿が見えてくるはずです。

当物件は一定の人気を集めるけれど

40点という残念な点数のマンションですが、それでも当物件は一定の人気を集めることが予想されます。単純な話で一般庶民向けの新築マンションの供給数が圧倒的に足りないからです。港区に限定すればほぼないと言っていいでしょう。

港区の中心部では継続的に新築マンションが供給されますが、その価格は異次元の価格帯であり一般庶民が手にすることはできません。手の届かない計画に期待しても無駄なのは誰もが分かっています。

港区の行政サービスの充実さを知っていれば郊外のマンションを買うよりは当物件の方がまだマシだと考えるのは全くもって合理的です。しかし、本当に合理的に考えるなら賃貸にすべきなのは言うまでもありません。

マスク騒動と不動産バブルの類似点

当物件が賃貸に負けるのは凶悪な管理費と資産価値の弱さです。結局のところマンションの資産価値は希少性に尽きるのです。粗悪なマスクが8,000円で売られていたあの騒動を思い出してください。

そして、激減した売上を補うために粗悪なマスクを高値で大量に仕入れた個人店が大損したことも思い出してください。バブルというババ抜きで最後にババを引くのはいつでも一般庶民なのです。

誤解しないでいただきたいのですが、当物件を購入した人が大損をすると言いたいのではありません。当物件の目の前には「ゆで太郎」があるので金銭面で大損しても精神面で損することはないからです。むしろ安心して当物件を購入できることをお伝えしたいのです。

ゆで太郎を好きになれるか

「かつや」の100円割引券無限地獄は有名ですが「ゆで太郎」のクーポン地獄も相当な破壊力です。安くて美味しい朝定食にコロッケやかき揚げのトッピングが無料になるのですから多くの人が夢中になるのも当然です。私もその一人です。

当物件の現地調査の際には「ゆで太郎」でお蕎麦を食べてみてください。ちなみにトッピングの海老天は小さくて美味しくないのでそれ以外をトッピングしてください。天ぷら蕎麦の海老だけはジャンボサイズでないといけません。

もし「ゆで太郎」の味が口に合わないようであれば当物件を買うのはやめておいた方が賢明です。「ゆで太郎」を好きになれなければ当物件の資産価値が住宅ローンの残債を下回った時のショックに耐えることができないからです。

個人的には当物件を購入するくらいならグローバルフロントタワーの「賃貸」で十分です。近くには「ゆで太郎 芝浦一丁目店」があるのですから尚更です。当物件を購入する理由が見つからないというのがレビューを書き終えての素直な感想です。

※「グローバルフロントタワーの中古も高いんですけど」とのご指摘をいただきましたが、重症なのでいますぐ病院に行ってください。私はグローバルフロントタワーを購入せよなどと一言も書いていません。マンション買いたい病にかかると「賃貸」の文字が「購入」に見えるようです。

終わりに

お疲れ様でした。当ブログのマンションレビューはマンションをネタにしたコラムであることはご存知の通りです。今回のレビューの目的は「新築マンションの抽選に連敗している愚痴を吐き出すこと」「ゆで太郎の素晴らしさを伝えること」だったのでしっかり書き切れて満足しています。

もちろん当物件を検討している方にとって有益な情報や考え方をお伝えできたとの自負もあります。このレビューが誰かの役に立つことを切に願っています。

最後にあらためてお断りしておきます。当レビューはあくまで私の個人的な見解です。他人の意見は参考にしてもいいですが、従ってはいけません。他人の勧める株を買って金持ちになった人はいないのですから、自分で責任を持ってご判断ください。

なお、当物件の購入を決意されたとしても、一度は不動産コンサルタントに相談してみてください。見落としている事実があるかもしれませんし、何も見落としがなければ安心して契約できると思うのです。多くの読者の方が不動産コンサルタントに相談して納得のいくマンションを購入されている事実を目の当たりにして、改めて強くそう思います。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事も読んでみてくださいね!!

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12件のコメント

クレアホームズ王子神谷TOKYOのレビューをお願いします。知り合いが購入して、ここよりコストパフォーマンスに優れたマンションはなかなかお目にかかれないと言っており、すでに完売したようですが、気になっています。中古が出るのを待つレベルでしょうか?

コメントありがとうございます。当ブログでは誰でもマンションを評価できる基準を公開していますのでぜひご活用いただきたいと存じます。ご自身で評価してみて不明な点がありましたらあらためてご連絡ください。ご指定のマンションがパークコート千代田四番町よりも優れたマンションであることを心から祈っています^^

レビューありがとうございます。
質問です!『諸経費 5.0 万円(往復)』とはなんのことでしょうか?基本的な質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

ご質問に回答します。諸経費(往復)については購入時の諸経費(往路)と売却時の諸経費(復路)を10年間120ヶ月で割ったものになります。当レビューだと1億円越えなので購入時で300万円、売却時で300万円ほど諸経費がかかると推定しています。実際はもう少しかかるような気もしており5.0万円は甘めの数値だとご理解ください。今からでも数値を変更しようかな^^;引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!!

いつも楽しいレビューありがとうございます。
レビュー内容について概ね同意しますが、気になる点を指摘させてください。

>>チェック4:安定した地盤であること
これって液状化ではなく、地震被害を想定してのチェック項目ですかね。
埋立地にもいろいろあり、豊洲の端っこや東雲辺りだと60~70mまで掘ってるマンションはありますが、
芝浦、特に4丁目は既存マンションでは20mくらいまでしか掘ってなく、杭長も15mくらいなので、内陸のマンションと大差ないレベルかと。

武蔵野台地に位置する制震ツインタワーマンションが3.11地震で1億以上の被害を出したことは有名ですが、
芝浦4丁目のキャピタルマークタワー(CMT)の当時の共用部被害額は192万でした。
都内の500戸以上の超高層マンションで、3.11地震において、CMTより被害が少なかったマンションを私は知りません。
マンションの個別性もあるので、モデルルームに行ってQualityBookを見ないと正しく評価できないかと。

>>チェック8:柱が室内に食い込んでいないこと→落第
下がり天井は実際にモデルルームで図面集を見てからの評価ですか?
階高が3.35mもあり、結構楽しみにしてるのですが
まあ、野村さんだし・・期待しないことにします(笑)

ゆで太郎は自分も好きなので、早く電子マネー対応にしてほしいですw

地盤については別の物件でも似たようなご指摘をいただきましたのでその際の回答を引用します。「当レビューの評価方法は明記しており、そのやり方に沿って機械的に判定をしています。私の評価方法を使えば誰でも当物件の地盤については落第と判定することになります。byプラウドシティ越中島のコメント欄」

公開している評価方法は初心者でもネット上の情報だけでマンションを評価できることを目的にしています。よって物件固有の情報を全てカバーできるわけがなく、物件固有の状況は各自がやるべき仕事になります。ご指摘の内容が誰でも確認できる方法があるのならぜひともご教授ください。当ブログの評価方法をアップデートしたいと思います!!

下り天井については実際の図面集で野村不動産らしさをぜひご確認ください。ゆで太郎の電子マネー対応は私も切望しています。ただ1万円札を崩すのにちょうどいいので食事と両替を兼ねてゆで太郎を愛用しています^^

たしかにnoteでお金取れますね。
以前ブランズタワー豊洲購入についてご相談させて頂き、世帯年収不足のため辞めた方が良いとアドバイスを頂いた者です。結果、辞めて大正解でした。購入資金や貯蓄を投資に回して、貯蓄を1000万ほど増やすことが出来ました。今は断然賃貸派となり、キャッシュフローを増やしてさらに投資をしていきたいと思っています。私の投資人生は名人の一言から始まりました。本当にありがとうございます。

お久しぶりです。ブランズタワー豊洲にコメントいただいたのが2020年7月ですから半年ちょっとで1,000万円増えたのは素晴らしいことです。アドバイスというものは結局のところ受け取る側のレベル次第なところがあります。私のアドバイスでこれだけの成果を出されたのはtask14様の実力があってのことです。投資は必ずスランプがやってきますのでその時にまたご連絡ください。スランプと好調の波を乗り越えながら資産を増やしていくのが投資の王道です。

また、お金を増やす方法を知ると賃貸でいいというお気持ちになるのも納得です。「家賃が勿体無い」という発想はお金の増やし方を知らない人特有のものではないかと感じています。また近況のご報告をお待ちしています。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします^^

今まではゆで太郎を見かけても通り過ぎていましたが食べてみたくなりました!次に遭遇したら入ってみます!

基本的には安くて量が多いのが売りですから味は完食できるレベルです。期待値を上げないこと、トッピングで海老天を頼まないこと、以上の2点に注意いただければきっとご満足いただけると思います^^

圧巻の長編。男塾まで出てきて餅つき名人先生の教養の幅おそるべしです。芝浦も千葉も埼玉も興味ないけど餅つき名人先生の文章ただただおもしろく勉強になります。noteでお金とればいいのに。
今回の超辛口警鐘レビューはゆで太郎の記述で全てマイルドにつつみこまれました。ただゆで太郎なくならないといいけど。
次に住むなら中古と決めているけど、秋に始まる三菱様の二つの麹町マンションプロジェクトにはエントリーしました。昨日メールきました。早速電話しました。四番町よりは値段は安くなるそうです。エントリーの大切さ、このブログで学びました。絶対モデルルーム見てコンサルタントに相談しますね、と秋に言います。番町、麹町、九段界隈、派手さはないけど、生活環境申し分なく、住民になりたいです。次の神宮のレビューも楽しみ。
あと中古マンションのすすめも加筆されていて面白かったです。読み返して新たな加筆発見するお宝発見もこのブログの魅力です。

いつも当ブログをご贔屓にしていただきありがとうございます。また最新の情報もありがとうございます。やはりパークコート千代田四番町は価格も別格でしたか。ただ、四番町より安いとはいえ麹町も坪単価700万円以上はするので結局は高嶺の花になりそうです。記事の加筆修正は随時行なっているのでぜひたまに読み返してみてくださいね^^

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