オリンピック後にマンションの価格は下がるのか

はじめに

読者からの質問

読者の方から「2020年の東京オリンピック後に不動産価格が下がるそうです。それなのにマンションを購入しても大丈夫でしょうか?」という不安交じりのお問い合わせを多数いただいています。

根拠は「誰かが言ってるから」

しかし私から「オリンピック後に不動産価格が下がるという根拠は何ですか?」と質問すると「友達が言っている」「親が言っている」「ネット上で言われている」「どこかで聞いたような気がする」などなど他人や名前も知らない誰かが言っていることが根拠であるとの答えが返ってきます。最後の「どこかで聞いたような気がする」に至ってはもはや根拠ではありません。

ノストラダムスの大予言をまだ信じている人っているの?

このように、自分で裏付けを取っていない話を信じるのはノストラダムスの大預言を信じるの同じくらい非論理的な行為です。「1999年7の月に恐怖の大王が来るだろう」という曖昧なフレーズがいつの間にか「1999年に地球が滅亡する」にすり替わり、1990年代の少年たちを恐怖のどん底に叩き落としましたが、その構図とまったく同じです。

1990年代の少年たちが愚かであることは2000年代に生きる私たちからみれば明らかですが、2018年のいま、オリンピック後に不動産価格が下がると怯えている大人たちはどうなのでしょう

不安は勉強不足が原因

別に東京オリンピック後に不動産価格が下がると信じている人が愚かだと言っているのではありません。自分が確信を持てる根拠があるのであればそれは立派な意見ですし、信じるに値するだけの価値もあるでしょう。ただ「誰かが言っている」という曖昧な根拠で不安を増長させることが健全な行為なのかと問うているだけです。

始まります

というわけで長い前振りとなりましたが、本日はこの「2020年の東京オリンピック後に不動産価格が下がるという噂」について私なりの見解をお届けしたいと思います。もちろんわさびと和がらしで作ったW辛口ソースを添えてです。大した内容ではありませんので肩の力を抜いて適当に読み流してください。

まずは不愉快な事実を受け入れよう

賢い人・運のいい人はもう不動産を買っている

皆さん自身でも周りの知人・友人でもいいですが、不動産価格が上昇してウハウハの人がいると思います。レバレッジを効かせている分だけウハウハ度合いは大谷翔平の打球速度くらいかもしれません。そうです、賢い人・運のいい人はすでに不動産を買っているのです。

いま不動産を保有していない時点で手遅れ

もしあなたがまだ不動産を保有してなければ「いま不動産を保有していない時点で、不動産投資に関する才能も運もない」という事実を受け止めてください。たとえ不愉快であったとしてもです。

草野球をしているおじさんの中からプロ野球選手になった人はいません。要するに才能も運もない人が今さら不動産価格を気にしても手遅れだということです。過去のマンション価格と今のマンション価格を比較しても無意味です。それよりも、いまやれることに集中すべきなのです。

オリンピック後に不動産価格が下がるは単なるデマです

不動産価格が下落しても得をする

そもそもの話になりますが、不動産価格が下落すると損をするという発想は間違いです。あらゆるものが投資対象となっているこの時代では下がることもまた儲けるチャンスなのです。なぜなら下がるほうに賭けることが出来るからです。

ですから、もしオリンピック後に不動産価格が下がるのが100%確実であれば、オリンピック後にREITもしくは不動産関連株を空売りすれば100%確実に儲かるということです。不動産価格が下がるのは経済の停滞を意味するので、FXで円を買ってもいいでしょう。私なら柔軟に対応できるFXを使います。もし不動産を購入してオリンピック後に価格が下がったとしても、損失分を埋め合わせることが出来るのであれば不安を感じる必要はないはずです。

確実に儲かる情報を他人に教えるはずがない

不動産価格が下がる時期を特定できるということは確実に儲かる情報を持っていることと同じです。もし私が確実に儲かる話を知っていたとしたら他人に教えるようなことは絶対にしないと断言します。なぜなら他人に教えることで自分の儲けが減るからです。もしくは自分の作戦を踏み台にされて損をすることすらあるからです。他人の損が自分の利益になるゼロサムゲームの世界でわざわざ自分の手の内を晒す人はいません。

オリンピック後に不動産価格が下がるは単なるデマ

つまり「オリンピック後に不動産価格が下がる」ことが確実ならば、確実に儲かる話だということです。そして、確実に儲かる話は絶対に世間に流布されることはありません。ところが、本来であれば漏れてこない確実に儲かる話がなぜ世間に流布されているのでしょうか。それはいい加減な噂話の類でしかないからです。要するにデマなのです。

デマを吹聴する人間はデマを言うことで儲けている

「オリンピック後に不動産価格が下がる」と言って騒いでいる人は下げ相場もまたチャンスであることを知らない、もしくはデマを言うことで儲けている、のどちらかです。「オリンピック後に不動産価格が下がる」と言ったり書いたりするだけで金になるのです。不安になることで安心する人たちの不安を煽る占いと同じようなものです。

もし本当に「オリンピック後に不動産価格が下がる」ことが分かっているのであれば黙ってその時が来たら全財産を下がるほうに賭ければいいだけです。わざわざ発言する必要なんてありません。

不動産を購入する本当の価値を知ろう

不動産を購入する本当の価値は家賃よりも安くその街に住めるから

私が通う深津絵里似のママが営むスナックが銀座にあります。そこには様々な職種の方が集まってきます。そんな銀座のスナックでよく一緒になる某不動産会社のお偉いさんが「素人が資産価値とか値上がりだとか知った風な口を利いてんじゃないよ。不動産の本来の価値は家賃で回収できるかどうかだけなんだよ。」と言っていました。

ロレツが回っていないそのセリフに微笑ましさを感じながらも、話の内容は全くもってその通りだと思います。月々の支払いが家賃より安いなら買う、家賃の方が安いなら借りる、それだけなのです。このシンプルな構図に値上がりという外来種のような概念を持ち込むことで、多くの人が不動産選びを難しくしているのが現状です。

やっと話が戻って来ました。不動産投資に関する才能も運もない人がいまやるべきこととは「値上がりするか」を気にするのではなく「家賃より安いか」に集中することなのです。

資産価値の定義をはっきりさせる

ところで読者の方とやり取りをさせていただいていると、資産価値の定義がそれぞれ違うことに気づきます。不動産価格が下がると言っても、買値を基準にして下がるのか、残債を基準にして下がるのかはっきりしないのです。

資産価値の定義は人それぞれでいいとは思いますが、少なくとも当ブログの資産価値の定義を明確にしておきます。当ブログでは「残債割れをしないこと」「家賃よりも安いこと」を資産価値の定義としています。本来の意味である「買値を上回ること」は資産価値として定義していません。

耐久消費財の一面がある以上、不動産も徐々に価値が落ちていく事は当然であり、新車を購入する際に買値以上に高く売れると考える人がいないのと同じです。

オリンピック後もマンション価格は下がりません

ここまで「オリンピック後に不動産価格が下がる」という噂は常識で考えると単なるデマにすぎないと結論づけました。ここからはマンションに限定した話をしてみたいと思います。

作り手の建築業界は絶好調

またまたスナックの話になりますが、これまたよく一緒になる小さな建築会社の社長さんのご機嫌なセリフをお聞きください。「儲かりすぎて、社員が過労死しちゃいそうだよ、ガハハ」。働き方改革が叫ばれるこのご時世に危険な発言ではありますが、建築業界は業績が絶好調過ぎて仕事を選り好みしています

仕事を選り好みしているというのに、この社長さんの会社の今年度の営業利益は前年度から倍増し過去最高益を達成するそうです。さらにこの社長さん曰く「建築資材の高騰は大きな力が働いているからしばらくこのままだよ。再開発はまだまだ続くし、あと5年くらいはうちも安泰だね。マンションの価格が下がったとしても8年後くらいじゃないかな。8年後に下がった価格で販売されるマンションが完成するのは2年後だから、価格が下がったマンションに住めるのは10年後だね。」とのこと。

下請けを担当している小さな企業でこの調子ですから、元請けとなるスーパーゼネコンをはじめとした大企業の状況は推して知るべしです。実際のところは原価・販管費の増加でそれほど利益は増えないようですが10年前の状況に比べたら天国のような状況です。

土地の値段も高騰している

反対にマンションを企画しているデベロッパーは苦しい状況です。ご機嫌な建築会社の社長の隣で「もうちょっと建築費を下げてくださいよ。うちの土地の仕入れいくらか知ってるじゃないですか。」と愚痴っているのはデベロッパーの担当者です。

デベロッパーがリフォーム事業や海外展開に力を入れ始めたのは何年前からでしょうか。もう新築マンションを建てて売るだけでは企業が成り立たなくなっているのです。

新築マンションの価格は下がらない

マンションは土地と建物で成り立つものですが、その土地と建物の両方の値段が上昇しているのです。その相乗効果で新築マンションの着工数が減少していきます。そしてこの現象が皮肉にも新築マンションの希少価値を高めてしまうのです。

希少価値こそが価格維持の源泉ですから新築マンションの価格が下がることを期待するのはピカソの絵の値段が下がることを期待するようなものです。オークション会場で「そのピカソの絵が値下がりしたら買う」と言って待ち続けていたら、その間に価格はぐんぐん上昇していくのです。もちろんピカソの絵を手にすることはできません。そしてこう言うのです「あのとき買っておけばよかった・・・」と。

中古マンションの価格も下がらない

そして新築マンションの価格が下がらない以上、中古マンションの価格も下がらないことになります。新築を諦めた人が中古に流れ、中古の価格が上昇していくからです。新築の価格が100から150に上昇したら、中古も50から75に上昇するのです。それでも中古の方が半額ですから取引が成立するのです。

金利が上がってもマンション価格は下がらない

金利上昇による不動産価格の下落を心配している人もいますが、上記のように物理的な構造上の理由からマンション価格が下がることはありません。金利上昇分を吸収できる余地はもう新築マンションに残されていないからです。すでにわずかに残る程度の利益を金利が上昇したからといってさらに削ることなどできません。デベロッパーは営利企業であり非営利企業では無いのです。

最悪の状況でも心配無用です

マンション価格が下がるとしたらクラッシュするときだけ

ただ、マンションも景気に左右されるものですから景気に連動して価格が下がることは否定しません。リーマンショックのような経済の事故が発生することもあるでしょう。

最悪の状況だと現状から▲25%の下落

個人的には新築マンションの価格が下がることはないと考えていますが、100年に1度と言われたリーマンショック時のデータを使って最悪の状況を想定してみます。最悪の状況を想定しておけば心構えができるからです。

直近でレビューしたディアナコート目黒の57m2・8,590万円の部屋で計算します。

まずはリーマンショックでも現在でもそれほど変動のない賃料を確認します。築18年、駅徒歩5分のタワーマンション54m2が月々23万円です。新築時の家賃はもっと高いですから年2%ずつ家賃が下落すると仮定した場合の20年間の平均27万円を想定家賃とします。(1年目:32万円、20年目:22万円、平均:27万円)

リーマンショックという100年に1度のクラッシュで不動産価格が大きく下落した時でも家賃の表面利回りは5%程度でしたので5%で家賃を割り戻してみます。ちなみに2018年の新築価格8,590万円だと表面利回りは3.8%です。

(27万円×12ヶ月)÷5%=6,480万円

(8,590万円−6,480万円)÷8,590万円=24.5%

どうやら経済がクラッシュした時は新築マンションの価格が現状から25%ほど下がるとの推測ができます。

価格下落の根拠はリーマンショックにあった

この下落率25%という数値はなかなかに強烈です。もしかすると読者の方の無意識の深層心理に深く刻み込まれているのかもしれません。オリンピック後に25%の不動産価格の下落があるかもしれないと想像してしまえば慎重になるのも理解できます。おそらくオリンピック後に不動産価格が下がるというデマはこの深層心理が生み出した怪物なのでしょう。

子供時代に口裂け女や人面犬の都市伝説が話題になりましたが、まさに同じ構図です。もちろんオリンピック後に不動産価格が下がるということを信じている人は都市伝説を信じているようなものだと言っているわけではないことをお断りしておきます。分別がある大人が子供がやることと同じことをするわけがないからです。

最悪の状況を心配するだけ無駄

もちろん分別のある大人であれば、リーマンショックのような最悪の状況の発生確率が低いことはわかっているはずです。首都圏の直下型大地震はいつかは発生しますが、その時期は分からないのです。心配するだけ無駄でしょう。

オリンピック前にマンションを購入しても問題ない

高名な禅僧である良寛さんは「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候」と言いました。災難にあっても乗り切る秘訣だそうです。どうしても欲しいマンションがあるのなら、家賃より安く住めることが担保されているのであれば購入してもいいと思います。不動産を購入する本当の価値は家賃よりも安くその街に住めることだからです。原則に立ち還ればそれほど難しい判断ではありません。

もし万が一、第2のリーマンショックが訪れたとしても家賃より安く住めているのであれば何ら問題はありません。収入減で家計がきつくなってきたら賃貸に出せばいいのですから。某不動産会社のお偉いさんが「素人が資産価値とか値上がりだとか知った風な口を利いてんじゃないよ。不動産の本来の価値は家賃で回収できるかどうかだけなんだよ。」というセリフはまさに真理なのです。

もちろん賃貸に出す以上、駅徒歩5分以内という絶対条件をクリアーした上でのお話です。郊外のバス便の長谷工マンションを購入してリーマンショックが来たら貸せばいいと考えるのは、ヘルメットを被らないでバイクで高速道路に乗るのと同じくらい危険な行為です。

また、今回の記事の序盤で触れた価格下落時でも得をする技術があれば損失を抑えることができますから、なおさら恐れる必要はありません。得をするという表現に違和感を感じるのであれば、ヘッジすると読み替えてもらってもいいでしょう。

終わりに

本日のまとめ

大変お疲れ様でした。くどいくらい同じことを繰り返してきましたが、ここまでのまとめをしましょう。

  • 「オリンピック後に不動産価格が下がる」という噂は常識で考えると単なるデマである
  • マンションの供給側の都合からオリンピック後でもマンション価格は下がらない
  • リーマンショック級の状況が来たら新築マンション価格は現在から▲25%程度下がる
  • 月々の支払いが家賃よりも安いのならオリンピック前にマンションを購入しても問題ない

これだけの内容を伝えるために6,000字近い文字数を必要としたのはひとえに私の文章構成力のなさですが、書いていて自分の思考の整理になったのでよしとします。

賃貸の方が無難

さてここまでオリンピック前にマンションを購入することの合理性を検証してきたわけですが、私は賃貸原理主義です。実際にマンションを購入するという選択肢を持つだけでオリンピック後の不安に苛まれ、これだけの余計な労力が必要になるのです。

1日は24時間しかありません。マンションを購入するという選択肢を捨てるだけで自由な時間が増えるのですから、賃貸のままでいいと割り切れるならその方が賢明な判断です。賃貸の方が金銭的にも得をすることが多いですからなおさらです。

>> 購入と賃貸の優劣についてはこちらをご覧ください。
購入と賃貸

靴磨きの少年の逸話

1929年の世界恐慌前夜にジョセフ・P・ケネディは靴磨きの少年に儲かる株式銘柄の話をされて手持ちの株式を全て売却しました。靴磨きの少年という末端の人までが株式相場を語るようではもう相場は長くは持たないと判断したからです。

インターネット上で素人がオリンピック後のマンション価格は下がらないと発表したことがどのような意味を持つのかお考えください。笑い話のようですが靴磨きの少年はここにいるのです。

次回以降のお話

とはいえ靴磨きの少年の御託もエンターテインメントとして読めば悪くはないですからしばらく続けていきます。次回以降のネタを売れそうもない本のタイトル風で先出し公開しますので、詳しく聞きたいことがありましたらコメントでお知らせください。

  • マンション探しに疲れたあなたへ(愛の処方箋)
  • 幸せへの特等席は中古マンションだった
  • 絶対損しない中古マンションの選び方
  • 絶対失敗しないリフォーム術

お疲れ様でした

それでは、今日はこの辺で。靴磨き少年の御託にお付き合いいただき本当にありがとうございました。もちろん最終的な判断は自己責任でお願いします。お疲れ様でした!!