本日の書籍
こんにちは、餅つき名人です。本日レビューするのは三井健太著「選手村マンション 晴海フラッグは買いか?」です。
前作の「マンション大全」を当ブログ初の書評として公開したところ多くの方にご覧いただくと同時に「ブログの書評を見て本を買いました」とのご連絡を多数いただきました。
私の書評が書籍の販売数に影響を与えるだけのパワーがあったのかはわかりませんが、前作の「マンション大全」は不動産関連の本としては異例の販売数になったようです。
出版不況の最中、部数が見込めるのなら続編を出さないはずがありません。間髪を入れず続編である本作が発表されました。ただ、タイトルを見てわかるように前作の続編ではなく、今話題の晴海フラッグについての書籍とのこと。
正直に言えば、タイトルを見て少し嫌な予感がしました。第1作が予想以上に好評だったので、慌てて作った二番煎じの匂いがするのです。作品というものはそう簡単に連発できるものではありません。
しかも価格発表前に晴海フラッグに関する本を出版するのですから急ぎすぎにも程があります。普通に考えれば晴海フラッグに便乗しただけの企画本として埋もれてしまうリスクすらあります。
果たしてこの予感は杞憂に終わり、前作同様に納得の結果となるのか。2回ほど通読しましたので早速レビューしてみたいと思います。
読んで感じたこと
Good:前作の実践方法が書かれている
最初に結論を書いてしまいますが、本書は晴海フラッグの評価を書いた本ではありません。晴海フラッグについての最終的な著者の評価はぼんやりと提示されていますが明確に「買いか否か」は提示されていません。本書は前作で公開された著者のノウハウを前代未聞のマンションである晴海フラッグで実践してみる内容なのです。
当ブログのレビューでも触れているように晴海フラッグは過去のデータや経験則が通じない全く未知のマンションです。本書を読めばそのような未知のマンションでも適切なノウハウを利用することで一定の判断が下せることを実感できるのは大いに意義があります。
Good:追加されたノウハウ
さらに、本書は前作の実践編であると同時に前作で書ききれなかったノウハウも追加されています。具体的にはタワーマンションの階数別の資産価値データ、大規模マンションの資産価値データ、バス便マンションの資産価値データ、間取り図の見方などです。
特に間取り図の見方に関してはかなりのページ数が割かれており、これからマンションを探し始める方にとっては必読の章でもあります。間取りに対するプロの視点を学べば営業マンに言われるがままにダメな間取りを購入してしまう失敗を避けることができます。
間取りに関して無頓着な方もいますが、間取りを侮ってはいけません。読者から「なんでこんなひどい間取りを買ってしまったのでしょう。担当営業は何も教えてくれませんでした・・・」という後悔のお便りが定期的に届くのはそれだけ間取り選びが難しいからです。
また、タワーマンションの階数別の資産価値データはタワーマンションを検討されている方にとって大きな指針になるはずです。無理してでも上層階にすべきか、低層階でも問題ないのか、という悩ましい選択に一筋の光をさしてくれるはずです。
Good:理解しやすい構成
前作もそうでしたが、本書の構成は綺麗に体系化されており書籍として読むに値する編集がなされています。なんのストレスもなく書かれている内容を余すところなく理解できるのは当たり前のようでいて当たり前ではありません。
Bad:Amazonのレビューは的確
本書のタイトルは「選手村マンション 晴海フラッグは買いか?」ですから購入者が本書は晴海フラッグが買いかどうかの結論が書かれていると期待するのは当然です。
しかし、すでに指摘したように、本書は晴海フラッグの絶対的な評価を書いた本ではありません。読者の期待から脱線するかのようにマンション選びのノウハウの話が続きます。晴海フラッグが買いかどうかという読者が一番知りたいことが曖昧にされている点は残念と言わざるを得ません。
その結果、不具合の確認以外に価値のないAmazonのレビューですが、本書に関するレビューは的を射るものになっています。本書は価格発表前に発売されているため肝心の費用対効果が抜け落ちているのですから仕方がありません。
おそらく販売戦略の都合から発売を急いだのでしょう。しかし、読者がそのような作り手側の意向を忖度する必要はありません。タイトルと内容が読者の期待と一致しない点が本書の唯一にして最大の欠点となります。
総評
オススメ度(☆☆:多くの人におすすめ)
冒頭の懸念「晴海フラッグに便乗しただけの企画本として埋もれてしまうリスクすらあります。」はおそらく的中することになるでしょう。しかし、本書の内容は単なる企画本とは異なる有用なものであることもまた事実です。
前作のマンション大全に書かれたノウハウを晴海フラッグという前代未聞のマンションで実践するという本書の内容はマンションの評価プロセスそのものであり、このプロセスを真似すれば他のどのマンションでも評価することが可能となります。
受験勉強に例えるのであれば、前作のマンション大全が教科書で、本書は問題集(解答例付き)です。教科書だけで合格できる受験生はほとんどいないはずです。教科書と問題集をセットで勉強することで合格できるように、本書もまた前作とセットで読むべき本なのです。故に本書のタイトルが本書の内容を正確に表現していないことが残念でなりません。
ただ、販売側の都合も分からないわけではありません。平置きで前作と一緒に並べるのであれば「マンション大全〜実践編〜」ではインパクトがないからです。手に取ってもらえない本は本としての役割を果たしません。このチグハグなタイトルは頭をひねり過ぎてしまった末の産物なのでしょう。
晴海フラッグの評価は自分でやる
本書は晴海フラッグを「絶対買ってはいけない」と叫ぶ狼少年(暴落評論家)や「21世紀型マンションの誕生」と煽る太鼓持ち(提灯評論家)が書いた扇情的な本ではありません。手軽に心地よい気分を味わいたいスマホ中毒の人には向かない本です。
本書をきちんと通して読めば散りばめられた問いかけと最後の一言を繋ぎ合わせることで晴海フラッグに対する筆者の評価は十分に感じ取ることができます。できれば最後に断言して欲しかったところですが限られた情報の中ではそれができないことは著者も触れている通りです。
晴海フラッグは過去のデータや経験則が当てはまらない前代未聞のマンションのため、当ブログでもレビュー執筆に1ヶ月近い時間を要しました。そして公開したレビューにいただいた様々なご意見はマンションの評価軸は十人十色ということを改めて感じさせるものでした。
評価軸が人によって異なるのであれば、最終的にはマンションの評価は自分でやるしかありません。本書には直接的な答えこそ書いてありませんが、いたるところに晴海フラッグを評価するためのヒントが提示されています。晴海フラッグを検討されている方はぜひ本書を手にとって自分なりの評価をしてみて欲しいと思います。
>> 当ブログの晴海フラッグのレビューはこちら。
晴海フラッグ以外のマンションの評価にも有用
そして晴海フラッグを評価するヒントは他のマンションにも流用できるのも見逃せない副産物です。つまり晴海フラッグ以外のマンションを検討している人にも本書は有用だということです。私が本書を評価するのはまさにこの点なのです。
終わりに
本書は晴海フラッグを検討している人はもちろん、晴海フラッグ以外のマンションを検討している人にもお勧めできます。ただし、このレビューの注意書きを理解の上で本書に臨んでください。そうすれば前作で一気に10レベルアップしたレベルがさらに5レベルアップすることでしょう。
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